金融庁は11月1日、中小企業に対する銀行融資の保証担保を経営者個人を背負わせる、いわゆる「経営者保証」の制限を行うガイドライン改正案を発表しました。
我々税理士が普段お話ししている中小企業でも、「息子が事業承継に個人保証を求められるのを嫌がって後継者になりたがらない」という光景をよく見ます。
また、日本全体で起業数が減少している背景にも、この経営者保証が起因するとの見方もあります。
今回の改正案は、来年2023年4月の適用を目指しているとのことです。
現在、中小企業向け融資のうち経営者保証が無い融資はわずか3割に満たない水準にとどまっており、中小企業経営の流動性を妨げる原因になっているように思います。
この保証制度が制限されることで、事業承継がよりスムーズになるよう期待したいと思います。
詳細な指針はこれからの発表を待ちますが、現在発表している事実とそこから想像される融資制度については以下のとおりご参考ください。
・従来のガイドラインでは「(1)法人・経営者の関係が区分・分離されている」「(2)財務基盤が強固」「(3)適時適切な情報開示をしている」の3点を経営者保証を取らない要件としていますが、改正案は経営者保証を取ろうとする金融機関側に対して「何が不十分だから経営者保証を取る必要があるのか」「どのような改善で保証の解除等ができるか」などの説明義務が課されることになります。
・金融機関はその説明内容を金融庁へ件数報告する義務が生じ、金融庁はヒアリング・検査を行い、違反などがあった場合には金融機関を行政処分できます。
・金融機関は経営者保証を取らないことで、企業の収益性や成長性などを見極める「目利き」の精度が求められます。
・企業側は経営者担保のない融資を勝ち取るためには、収益性や成長性・返済可能性を自ら高める必要があります
事業承継をするタイミングで企業に融資債務が残っていることは一般的ですが、後継者から見ると「もし会社が倒産したら自分も個人破産だ」という恐怖が付きまとうことになります。
事業に対する熱意だけでその恐怖に打ち勝てるのであれば問題ありませんが、多くの後継者はそうではありません。
この融資保証制度の改正がどれ程の実行力があるか未知数ですが、銀行が企業に対して「貸し渋り」を起こすことなく、企業が事業承継に本気で取り組める環境が整うことを願います。